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『腹腹時計』 / 東アジア反日武装戦線・狼グループ


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腹腹時計
東アジア反日武装戦線・狼グループ
1972






1970年代初頭に三菱重工丸の内ビル爆破を始めとする連続企業爆破を実行してきた極左グループの地下活動教則本。爆弾テロの趣旨に関するアジから地下生活の方法、爆弾の作り方まで幅広く書かれている。当時密かに販売されていたらしいが、現在でもごく一部の独立書店で公然と入手できる。


天皇暗殺まで企てその一歩手前まで行ったグループだが、極端なまでに日本の戦前植民地支配を糾弾し、日本人全体を「日和見主義者」とみなす彼らは新左翼と完全に一線を隔している。そして地下生活のこまごまとした細部(着床の時間や近所づきあいまで)に至って解説するその内容は非現実を通り越して、それ自体イデオロギーのようである。


オウム真理教のように完全に彼岸的な善悪に属する目的を目指しているのであれば、現実的世界の正統性とは相容れない。しかし東アジア反日武装戦線の彼らは第二次大戦の戦中戦後も通じてアジア諸国から「収奪を行う」日本の現実的な政治上の問題に対して異議を訴えている。彼らのテロ行為は白色テロのそれと同じ、犯罪行為に過ぎない。だが彼らの政治的主張に対して、日本人は、彼らへの主張ではなく、彼らが対象とするアジアに対しての道義的な回答を迫られてしまうのだ。

しかしこの文脈上で明らかになることは、反日武装戦線とは、彼ら自身がアジアに対して道義的責任を担うはずの日本人当事者であること、その欺瞞性をいとも簡単に捨象し切ってしまっていることである。

「腹腹時計」の中では、日本人プロレタリアートの全てすらことごとく「日帝支配の尖兵」と見做し、反日武装戦線の攻撃対象とされる(この点において彼らが他の新左翼グループの革命思想と断絶している)。この論理に基づいて、三菱重工ビル爆破事件に代表される一連の連続企業爆破事件の犯行の無差別テロを彼らは正当化した。

あらゆる既存の党派との共闘を拒み、近代的革命思想の根底に位置する市民社会への信頼すらも唾棄し、大衆の波間を潜行しながらその一切のものから弧絶する。反日武装戦線のテロ行為の意味はアナキズムですらない。

反日武装戦線は日本人を敵視の対象としながらも、彼らは紛れもなくその日本人当事者である。その事実は彼ら自身を深く貫き、決して捨象することはできない。だがその民族的カテゴリに属するアイデンティティを殺し、自らの出自を否定するイデオロギーのカテゴリにこそアイデンティティを依拠しようとする。そういう奇形化した究極の自己否定、そんな負の情念こそが、党派でもなく大衆でもなく、何よりの彼らの同胞なのである。

しかし、反日武装戦線が糾弾する「日帝」の、その迫害対象となったアジアそのものは、彼らが自己否定しようとした民族的カテゴリの立場において「日帝」に迫害されたわけである。反日武装戦線が(いとも安易に)捨て去ったものであるはずの、民族的カテゴリの上にアジアは自分たちのアイデンティティを自覚し、日本の帝国主義支配の非妥当性に抵抗していったのである。

支配する立場に出自する者がその事実自体を消し去って支配される側の立場を擁護しようとしながらも、支配される立場に出自した者がその事実を根拠に支配する側に異議を唱えている。この文脈において反日武装戦線の論理は矛盾を来たし破綻している。

反日武装戦線はおよそ狂った爆弾マニアではなく、愚直過ぎるほど政治的に直線の思考を自らに要求していった。ただ、彼らは彼らの出自が犯した非人間的戦争犯罪を呪いながら、彼らがその民族の当事者であり続けなければならない不可逆的宿命を受容することができなかった。

人や、民族にとって、加害者的当事者性と被害者的なそれを、時として両方を生きなければならない。ただ、その両方を生き得るような両義的な可能性がどこかに必ず存在する。

腹腹時計の文脈を覆う、なにか、どこまでも自己を追い込んでゆくような教条的な冷えた感触は、その書き手が陥った矛盾の袋小路を想像させる。

自己と他者を分け隔たる両方にとっての意味というものが在って、その両方はそれぞれ別々ながらも同じような価値を持ったものだ。

そのどちらの価値をも肯定し得ず、どこか自分と世界がパラドックスした感覚で、自分たちが最も呪っていた暴力の循環に陥っていったような、腹腹時計にはそういう悲しい色彩が見える。




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逮捕・連行される東アジア反日武装戦線のメンバー(1974年)









狼煙(のろし)を見よ―東アジア反日武装戦線“狼”部隊 (現代教養文庫―ベスト・ノンフィクション)狼煙(のろし)を見よ―東アジア反日武装戦線“狼”部隊 (現代教養文庫―ベスト・ノンフィクション)
(1993/09)
松下 竜一





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