Vich-Review

≫2005年11月

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太陽を盗んだ男


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太陽を盗んだ男


1979年 日本映画
監督:長谷川和彦
脚本:レナード・シュレイダー
出演:沢田研二 菅原文太 池上季美子


あらすじ-goo映画




黙示録の時代に表象される人々の孤独


もはや20年以上前の映画であり、監督作品がわずか2本にもかかわらず現在でも根強いカルト的支持者を擁する引退同然の映画監督長谷川和彦の貴重な2作目。


いたって平凡な東京在住の中学理科教師が交番を襲って拳銃を奪い、東海村の原発からプルトニウムを強奪する。アパートの自室で苦労の末、一個の原子爆弾を完成させる。理科教師の男は原爆の保有を密かに政府に知らせ、国家を相手に脅迫を開始する。といっても野球のナイター中継を延長させたり、ローリング・ストーンズの来日を要求したり、脅迫内容に困って仕方なく現金を要求したりと、バイタリティに欠け、なんともショボいのだが。やがて男は自分の体が原爆製造の際に浴びた放射能障害に蝕まれていることに気づく。


かなりB級だが戦慄に満ちた映画ではある。なにせ核兵器が絶対禁忌の唯一の被爆国にして原爆がたった一人の男に製造されるのである。今でこそ米国TVドラマでテロリストの核攻撃が題材になる時代だが、核拡散の問題を劇場型犯罪に結びつけた発想自体がすでにメガトン級である。

平凡な市民生活を送る愉快犯というアイデアも製作当時の発想にしては冴えている。ディティールの恐ろしいまでの粗さを抜きにすれば水爆ぐらいの迫力のある作品だろう。なんせドラマ前半、中学教師と生徒が乗ったバスを完全武装した老人にバスジャックされたとき、皇居に強行侵入して手榴弾を投げ込んだりするんだから。


ストーリーの展開は細かいミスに目をつぶればかなり見ごたえがある。原爆が完成したときに沢田研二がボブ・マーリーを聞きながら踊るシーンなんかのユーモラスさもある。主人公が結構いい人(?)だったりするので感情移入もしやすい。

ただ全編を覆うのは無機質というか殺伐を通り越した虚無的な孤独感である。もう死んでしまっているかのような孤独感である。

映画冒頭は核実験のキノコ雲とその轟音とともに始まるが、その死のイメージに相応しい透徹された冷ややかな孤独感だ。

可愛がっていた野良猫がうっかりプルトニウムの破片を食べて即死するシーンなどむちゃむちゃ痛い。警官に包囲されたデパートのトイレで抜けていく自分の髪の毛を見て錯乱するシーンも哀しい。

なんかだ男が一人、自分の部屋でこの世の最終兵器を作っていくという設定自体が寒々とした侘しい孤独としか言いようが無い。


なにかあまりに原爆というヨハネ黙示録的ハルマゲドンの絶対性に対して、それと向き合う一個の人間の物理的・存在論的規模があまりにも過小で貧弱で儚すぎるのである。

冒頭の核爆発の映像がこの映画が核時代を生きる人間の砂塵のような存在感を表出し、個人の観念の中で核と相対することがいかに不可能で圧倒し尽くされるかを象徴している気がする。


菅原文太演じる刑事と死闘を繰り広げた後、男は投げやりに生気を喪失した顔で、時限装置がオンになった原爆の入ったバッグを抱えて力なくガムを噛み、街の中へとぼんやり歩いていく。時限装置の秒針の音が次第に高まっていき、ふっと音が止まった瞬間、画面は脱力気味の男の顔のストップモーションとともに核爆発の轟音が流れて映画は終わる。

このラストの戦慄は凄まじいが、エンドロールが流れる頃になんとも言えないやりきれなさを感じるのは、わたしがシリアスに考えすぎなのかねえ。


わたしは長谷川和彦氏と握手をして言葉を交わしたことがある。「孤独を感じました」と映画の感想を述べると、長谷川氏は「そうか?」と不可解そうな表情をしていた。頼むから、寄り道道草を食わず、早く連合赤軍映画を作って、カムバックしてくださいよ、長谷川監督。


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太陽を盗んだ男太陽を盗んだ男
(2006/06/23)
沢田研二



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Steve Reich / Different Train


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Steve Reich /  ”Different Train” / 1989

 

Steve Reich   1990年
Reich: Different Trains, Electric Counterpoint / Kronos Quartet, Pat Metheny


1.Different Trains: America - Before the War
2.Different Trains: Europe - During The War
3.Different Trains: After the War
4.Electric Counterpoint: Fast
5.Electric Counterpoint: Electric Counterpoint: Slow
6.Electric Counterpoint: Fast




ミニマルの涯てに見えてくる反復され得ぬもの


ジョン・ケイジに並ぶミニマル・ミュージックの分野における現代音楽の巨匠スティーブ・ライヒの1988年発表作。


ジミー・ヘンドリックスの「紫のけむり」などのポップスのカヴァーで知られるストリングス・グループ、クロノス・カルテットとの共演。

話し言葉の断片や列車サイレンの音をテープで流し、弦楽4重奏の反復されたフレーズを少しずつコードを変えながら進行する。


ストリングスになぞられるように反復する言葉の断片によって紡がれる主題。

第二次大戦前の移民アメリカ人が乗った列車の人々の言葉。大戦中のナチスのホロコーストの生き残りの人々が語る体験談。そして戦後生き残った人間たちが辿っていく軌跡。

この三部構成が、本来のミニマル・ミュージックの諸要素を大胆に活用しながら、それとは対極的に、動機を徹底操作した作家主義的な堂々たる大作に仕上げている。


ミニマル・ミュージックは現代音楽のコンテクストであり、ミニマル(反復)とは現代の位相を語る上で根幹をなすテーマである。

コピーやサンプルの代替可能なシステムが人間性排除を生み出してくるミニマルの表層は無機質である。


しかしここでライヒが展開したミニマル・ミュージックは反復の上に人々の生のドキュメンタリーな言語と、美しい弦楽のフレーズの展開を巧妙に織り上げることで、ミニマルの表層を突き破る生き生きとした物語性を獲得している。

本来、物語性や作家主義的動機を軸としないポストモダンなミニマルの諸条件が、この作品においては作品全体の劇性構成に貢献し、ロマン派音楽のような楽曲の叙情性を形作り、作者のメンタリスティックな主題を雄弁に語らせている。


このドラマティックな展開はその辺の映画音楽の安直なメローなコード進行よりも、過程の紡ぎとフレーズ一つの位相の切実さによって、ライヒが辿りつくミニマリズムの極北に、図らずもコピーや反復のシステムに対峙するわたしたちの現代の生の姿を共感的に訴えてくる。


反復としてのミニマリズムを徹底的に追求して行き着いたところに、本来のミニマリズムとは相反した、反復し得ない一回性の立ち位置が見える。

楽曲の構成上では反復でしかないそれらの「独白」が歴史上の証言の言葉としての等身大の重さを伴って、反復され得ない世界と人間についての「いま」「そこ」の一回性を紡ぎ上げる。

そこにはミニマリズムが相対性の地平において決して解消することのできない、わたしたちの「実存」の在り様が、愚直なオーソドックスを装いながら浮き彫りにされてくる。




今作ではパット・メセニーとの共演による「エレクトリック・カウンター・ポイント」('87年発表)も収録されているが、ここでも「ディファレント・トレイン」と似た方法論での楽曲が展開されている。


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Reich: Different Trains, Electric Counterpoint / Kronos Quartet, Pat MethenyReich: Different Trains, Electric Counterpoint / Kronos Quartet, Pat Metheny
(1994/10/26)
Steve Reich



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