Vich-Review

≫2008年07月24日

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Beck / Mellow Gold


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Beck /   ”Mellow Gold” / 1994

 






10年以上前のこと。大学生だった僕は自主映画を作っていた。
8ミリフィルム、モノクロで、ファーストシーンにビラがいっぱい散らばったワンルームで主人公の男がTV画面の「砂嵐」を眺めてる。そういう、いかにも「難解ホークスやってみました」みたいな映画だった。

そのファーストシーンのビラだが、そのビラには何が描かれているのがいいかってことをいろいろ考えていたとき、同じサークルだった友人が僕の隣でギター弾いたりゴロゴロしたりしながら、なんか粗雑だけれどポップな雰囲気の人物のイラストと英語の文章をA4の紙に書き散らしていた。

「これにしよう」。
僕はそのイラストと英文が書き散らされたA4用紙をもらって、そいつを大量に100枚ぐらいコピーした。それをロケ現場(というほどのものでは勿論ないが)のマンションの一室にばら撒いて、映画のファーストシーンを撮影した。

実はそのイラストに描かれた人物がBeckで、添えられた文章がLoser のサビの部分の、あの有名なフレーズ、“Im a loser baby, so why dont you kill me?”だったということを、僕はおよそ10年過ぎてようやく最近分かった・・・・・・。

そういえば、その友人が「ベック」という名前を言ってたような曖昧な記憶を思い出した。そんで、それに対して僕が「え?ジェフ・ベック?」とか、何度か訊いてたような気がする。



僕が初めて聞いたBeckのアルバムは、確か“Sea Change”で、“Guero”が出る直前だった。「なんか暗い・・・・」と思いながら、次にその前作“Midnite Vultures”を聴いて、打って変わってファンキーでノリノリに驚いた。それから“Mutations”、そして“Odelay”を買って、これが一番かっこいいと思って、一番最後に1st の“Mellow Gold”に辿りついて、最初の曲の歌詞を見て「ああ、これだったんかいな!」ということになったわけだ。

Beckはよく、「折衷主義ロック」とか言われたり、「ミクスチャーロック」のカテゴリで紹介されたり(厳密には誤りだと思うんだが)する。確かに“Odelay”なんか「折衷」的方法論の教科書みたいな感じがする。それと TSUTAYA なんかではBeckのCDの紹介コピー文に、日本の Cornelius と同じみたいに扱われてたりする。それはもちろんBeckのアルバムの音楽的変遷がCorneliusみたく、アルバムごとにコロコロ変わって多彩でユニークである(悪く言えば節操がない)類似を指摘しているわけだが、僕はそういうBeckの、一つのカテゴリに収まりきらない音楽的スタンスに好感を感じる。一つの曲の中にフォークだとかブルースだとかヒップホップだとかテクノだとかを数珠繋ぎみたいにコラージュ、というかサンプリングするみたいな「折衷主義」ロックの方法論がなによりもBeckの魅力だと思う。

Beckのアルバムってのは音楽的ネタがそれぞれ結構幅が分かれている訳だから、「Beckの代表作を挙げる」みたいなことは難しいし、あまりそういうのは意味がないと思う。個々のアルバムについて一つ一つ主観的思い入れをたらたら書いていくようなのが妥当という気がする。そういうことをしてもいいんだけど、あえてここで“Mellow Gold”について僕が書きたいのは、例の「自主映画時代」にまつわる思い入れもあるのだが、Beckの中に同居しながら互いに相反するミュージシャンとしての輪郭が、上手くバランスをとって示されていると思うからだ。

例えば、“Odelay”なんかに顕著に現れているのは、限りなくポップミュージックに対して批評的な音楽性を投げかける革新的なクリエイターとしてのBeckの輪郭がある。こういうアルバムの中で見えるBeckのスタンスは、「リボルバー」を出した頃のビートルズの光景であったり、一連のアンビエント作品群を飛ばしまくったブライアン・イーノの姿であったりして、「先鋭」とか「実験」という言葉が当てはまる音楽至上主義的表現者のスタンスなのである。

だがそうかと思えば、実験的精神の塊みたいな“Odelay”の次作にひたすら趣味的作風を「盆栽みたいに並べてみました」みたいな“Mutations”、「踊れる音楽」を多彩に独自的解釈する非常にテンションの高い“Midnite Vultures”の後に、単調なトーンで「私小説」の調べを紡ぐかのような“Sea Change”を出したり、Beckには必ず一つの創作に対して反動した作風をいきなりぶつけてくるような面白い特徴がある。

Odelay”や“Midnite Vultures”に代表される批評的音楽性、細部に渡って新しい発想を施す音作りの革新的クリエイターな姿とは、まるで対極に位置するような作品として“Mutations”や“Sea Change”がある。これらのアルバムの中では既存の幅広い音楽ジャンルを加工されない形でそのままの素材として借り出して、例えばごくプライベートな事柄を歌ったり、また非常に内面的な領域をテーマに据えてオーソドックスな方法で表現を「物語る」ことを追求していたりする。いわば、キャロル・キングが典型であるようなシンガーソングライターの系統を踏襲する音楽の文学的な素地へストイックに依拠する姿勢、シンプルなサウンドで歌詞やボーカルの力を前面に打ち出し、歌われる対象に対して多分に内的に表現しようとする作家主義的なミュージシャン、という、Beckには「先鋭」とか「実験」とは対局するもう一つの個性がある。

彼自身、自らのそういう互いに相反するミュージシャンの顔の要素が自らの中に同居していることをどのように考えていたのか。“Sea Change”を作った後、Beckは「もうこれを作ったら、後はなんでもいい」みたいなニュアンスの発言をしていたような記述を何かで読んだが、確かにそれ以降の“Guero”や“The Information”といった近作ではリラックスして臨んだ印象を受ける。本来の「折衷主義的」方法を前衛を背負うような性急な姿勢ではなく、やりたいようにやってる観がある。


だが、Beckの革新的クリエイターとしての側面と、フォークロックに本流を求めるような作家主義的な側面は、もともとすでに提示され、それらが最も理想的に昇華されたのが、1st の“Mellow Gold”であり、この作品を引っさげてやってきたところに「グランジの最終兵器」と呼ばれたような、Beckの独自性がロックシーンに叩きつけた当時の巨大な戦慄の空気が伺えるように思うのだ。

冒頭を飾るLoser の衝撃は、発表からおよそ10年を過ぎた僕の属する世界をも重い切実感を持って表象する、時代の経過に耐えうる普遍的(であることが悲劇的)なものだ。僕はこの曲でラップ音楽を受容することができたのだが、これを聴くと、例えばギャングスタ・ラップで歌われるような過激さがまるで保守的なルールの上できちんと整列する縛りをかけられたあらかじめ拘束された音楽にすら感じてしまう。またI'm a loser baby so why don't you kill me ?のフレーズの前では、かつてのNo,futureという最も有効的だった否定的言辞すらも、なにか未だやたら元気な余裕を持って健康に「主張」しているように聞こえてしまったりする。だが、Loser ではもはや「主張」どころか「対峙」すらしていない。全ての能動性を放棄して、自己を唾棄して、どこまでも脱伍してゆく感じがする。その「落ち方」がいい。

サウンドの部分の独自性だけでなく、Beckのボーカリストとしての個性がこのアルバム全体を多彩に彩っている。ノイジーな曲で現れる「アヒルの首を絞めたような」絶叫や発生も彼の音楽の不規則性を表現して鮮烈だが、もともとフォークを出自とした彼の「聴かせる」歌モノもいい。Pay No Mind なんかは僕はボブ・ディランを聴くのと似たような感慨を受ける。オルタナティヴなアルバムでありながら、こういった曲ではある意味正統的で、脈々と繋がるフォーク・ロックの道筋をオーソドックスに辿るような再帰性を感じるのだ。


Beckが1stで提示した彼の中の対極的な個性は、この後、2つの音楽的ピークとして次作の“Odelay”や、また“Sea Change”において、それぞれ違った彼の側面として迎えられることになる。だが“Mellow Gold”は1stであるがゆえの音楽的な飢餓感というか、初期衝動(脱力的なBeckにとっては独特のそれ)を持ち得てるがゆえに、やはりこのアルバムが一番好きな理由となる。




そういえば、最新作の“Modern Guilt”も出たんだっけ。


サークルの友人が描いたBeckのイラストは、まだ僕の部屋のどこか奥に残ってるかな・・・・・・。






22beck99.jpg








Mellow GoldMellow Gold
(1994/03/01)
Beck

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Modern GuiltModern Guilt
(2008/07/08)
Beck

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