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シン・レッド・ライン


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シン・レッド・ライン


“The Thin Red Line”
2000年 アメリカ映画
監督・脚本:テレンス・マリック
原作:ジェームズ・ジョーンズ
出演:ジム・カヴィーゼル ショーン・ペン ニック・ノルティ ジョン・キューザック ジョン・トラボルタ ジョージー・クルーニー


あらすじ-goo映画



第二次大戦下におけるガダルカナル島を巡る日米両軍の激しい攻防が繰り広げられた戦地が舞台の戦争映画。監督はテレンス・マリック。ずいぶん寡作な監督だがハリウッドでは巨匠的存在で、この作品のオーディションでも有名な若手俳優の志願が殺到し、役の獲得は熾烈を極めたという。すでに戦争である。


ガダルカナルの自然や原住民に魅せられしょっちゅう脱走を繰り返す兵士が主人公。その部下に対し心中では理解を感じながらも冷徹な戦場での生き方を課そうとする下士官をショーン・ペンが好演。前線の寸分の距離を巡って激しく交戦し死闘を繰り返す日米両軍。あるときには若い味方の兵士の苦悶の末の死に向き合い、そして別の場所では占領した敵陣地での哀れに命乞いをする日本軍の傷病兵の姿に遭遇する。逃亡しては帰隊を繰り返す主人公には本国に残した妻から離婚を求める手紙が来る。そしてある日斥候を命じられたジャングルを潜入中についに日本軍の分隊に包囲される。「おまえか、おれの部下を殺したのは」と怒りをこめて近づき投降を促す日本兵に、銃を捨てることなく射殺される。


戦争映画と一口に言っても牧歌的な南洋の風景が色とりどりに映し出され、詩情に溢れている。そしてまるで詩をリーディングするようにあらゆる登場人物のモノローグがつらつらと流れる。それはいかにも祈りに満ちたものであったり、俗世間の愚弄さを引きずった疲れを帯びていたりする。


敵の陣地の近距離に接して今まさに手榴弾を投じて急襲しようとする決死の瞬間にも、妻を求める詩的モノローグを呟き、スクリーンに故郷の田園で妻と交じり合う回想のカットが唐突に挟み込まれたりもする。ここでは戦場であっても理性を殺して統率された部隊の集団殺戮のリアルな姿は前面に出てこない。むしろ繰り返し強調されるのは個人の呟きであり、戦場に生命をさらし続ける個人の知覚像なのである。この詩的モノローグや回想シーン、戦場の兵士が視覚した自然や動物の静的なイメージの挿入の方法は、これ自体が効果的な方法によって戦争映画における通常のドラマ優位の映像の進行を解体して、ドラマを個人レベルに引き下げ登場人物の数だけ分散し、劇映画の正統的かつ中央集権的とも言うようなシナリオの流れを壊してしまう。言い換えれば戦場における非日常的な行為の時間の中に、なおしっかりと息づいている個人の体験と思考に基づく日常の時間をきちんと描きこむのである。結果的に浮かび上がってくるのは、従来「戦争」や「戦争ドラマ」によって踏みにじられ拡散されてしまうことになる運命の、ありきたりな個人の行為と思考の間に繰り返される代替不可能な時間性であり、そのことがドラマツルギーを矛盾をはらみ曖昧に進行させる主体となる。なぜ矛盾をはらむかというと、わたしたちの日常性が本来そのような非集団化された場所でドラマの主人公のようには生きていないことがリアリティーを保っているからである。このような論考を進めていくとこの『シン・レッド・ライン』が類稀な視点を持った戦争映画であることと同時に、戦争映画であるという必然を決して要しない、人間の思考と行為の反復する日常性と世界像の交錯についての命題について言及した作品であるということも容易に想像できるのである。


映画は冒頭、南洋の目も眩むような眩い自然の光景から始まり、ラストもまるで蛇足のように冒頭と同じような自然の数カットが収まって静かなフェードを迎える。マリック監督の視座がすでに個人の生を飛び越して、先史から連なる世界の時間性そのものの原初的姿態に向かって開かれているような効果である。わたしはこのラストの自然に包まれた静寂を思うとき、まるでここで先程までの戦争が行われていなかったかのような錯覚を感じる。そればかりかまるで人間の生き死に自体がこの海洋の大らかな膨らみの中では最初から存在しなかったのではないかという感慨を覚えるのだ。戦争や人間の生涯という事象が有機性の循環としてのたおやかな世界像の中では、まるで無に等しく価値という名の作為的な基準の裁きも存在しない、そんなあてどもない気分にまで長いエンドロールの間に連れ出されるように思われるのである。


余談ですが、ショーン・ペンって、現阪神タイガースのジョージ・アリアス選手に似てません? なんか、マドンナと結婚したての、甘ったるいマシュマロちゃんだった頃の。

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シン・レッド・ラインシン・レッド・ライン
(2004/11/25)
ジム・カヴィーゼル



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