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ゴールキーパーの不安


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ゴールキーパーの不安


“Die Angst des Tormanns beim Elfmeter”
1971年 旧西ドイツ映画
監督:ヴィム・ヴェンダース
撮影:ロビー・ミュラー
出演:アルトゥル・ブラウス  エリカ・プルハー


あらすじなど-ヴィム・ヴェンダースUnofficial Fansite




『パリ・テキサス』『ブエナビスタ・ソシアル・クラヴ』などで著名なドイツの巨匠ヴィム・ヴェンダースのTV放映用劇映画で長編デビュー作。サッカーとはほとんど関係の薄い映画で公開当時ブーイングを浴びる。


初期のヴェンダース作品の難解さの特徴、つまり登場人物の行動の知覚化にのみドラマツルギーの進行が委ねられている点が色濃く反映されている。よってこのデビュー作も難解かつ不可解な進行に翻弄される。


サッカー選手の主人公が審判と喧嘩して退場する。その夜出かけた映画館のチケット売りの女をナンパして彼女の家で一夜を過ごすが、翌朝なんの脈絡も無くいきなり女を絞殺する。逃亡する意思も無く彼は国境付近の町に旅行に出かけ滞在した村で散歩したり、酒場で喧嘩に巻き込まれたり、昔のガールフレンドに会ったり映画を見に行ったりする。ラストはその村で開催されたサッカーの試合を観戦する、といった感じで全く焦点が絞られていない。


ただ男の犯した殺人事件が新聞に掲載されたり、近所を警官が徘徊していたり、たまたま滞在した村で彼が行方不明の聾唖者の死体を散歩中の池で発見したときなど、そういうシーンが何気なく挿入されたとき不安を掻き立てるような音楽が鈍痛のように流れ戦慄が走る。しかしそれが過ぎ去ればまるで何事も無かったように男の生活のやりとりがごく日常的に進行する。明らかに殺人を犯した出来事と主人公およびその日常性とは一線を隔している。そのボーダーラインがまるで物語を途中でぶった切ったように乖離の程を示すのである。だから観客も殺人に関してあれが何の伏線だったのかという読み込みを断念せざるをえなくなる。


非日常でも不条理でもない。むしろ終始一貫日常を追いかけている。ただ殺人を犯した一点にのみ辻褄が合わず、この一点のおかげで物語の進行に不可解な感触を覚えさせられなにか微妙な不安に苛まれる心地がするのだ。これはなにかしら実存に関する問題定義なのか、あるいは映画的(もしくは作話的)技法の方法論の提示なのか、この辺で読みがまた混乱してくる。実に挑発的な映画なのだ。


ラストのシーンで主人公は観客の一人に、サッカーの試合のペナルティキックの場面でペナルティキックに際してのゴールキーパーの不安の心理を話して聞かす。やがてペナルティキックが蹴られゴールキーパーはボールを正面で受け止めゴールを退け、主人公は薄笑いを浮かべ試合場を後にする。この場面が見ていて一番「殺人を犯したこと」と男の生きている日常のリアリティが限りなくニアミスする思いがする。全く関係の無い場面と会話なのだが、あのあたかも虚構のように遠ざかった殺しの事実が現実のものとして、物語の中へ再び激しく接近するように感じるのだ。恐らくこの場面で男の語る「不安」こそが終始観客のわれわれが感じ続けたものであり、映画の日常性の中で最もリアリティを帯びた男の主体的な言辞だからではないだろうか。ゴールキーパーの不安に反映された言葉は直接にどこかへ対応するものではないが、その唐突に現れた主人公の側から放たれるベクトルの言動=行動が、これまでの意思を反映しなかったようなおぼろな殺人や、明確性を欠いた殺人後の日常に示されているような行動の受動的な空気に対し、唯一ベクトルがついに衝突する場面に立ち会う感触に出会うのである。まるでそれまでの物語の現実が男の感じた知覚のみで覆われた全くの表層のみで構築された無内容な世界であったかのように。


ヴェンダースのこうしたリアリティ、もしくはアイデンティティ不在に関する主題や映画的技法の問題は、『都会のアリス』『まわり道』『アメリカの友人』などのその後の作品の変遷を経て扱われていくことになる。それがひとつの完成された形で結実されたのが82年発表の『ことの次第』だろう。


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ゴールキーパーの不安ゴールキーパーの不安【字幕ワイド版】
(1997/12/22)
アルトゥール・ブラウスヴィム・ヴェンダース



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