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腹腹時計


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腹腹時計


1999年 日本映画
監督・脚本:渡辺文樹
出演:渡辺文樹


渡辺文樹-Wikipedia




昔ちょうど田中真紀子の親父が総理大臣をしていた昭和の時代に、戦後唯一天皇暗殺を計画したアナキストグループが存在した。それが東アジア反日武装戦線「狼」。「虹作戦」と称し、彼らは葉山の御用邸から帰京する天皇の御用列車を鉄橋上で爆破しようとしたが、爆弾こそ製造したもののあともう少しというところで爆弾のセットに失敗。「狼」は失敗に終わった爆弾を今度は「ダイヤモンド作戦」と名づけて、戦時中軍需産業の分野で日本軍に積極的に協力した企業、三菱重工を狙う。東京丸の内支店に仕掛けられたその爆弾は今度は爆発。300余人の死傷者を出すに到る。


ここまでが実在の戦後史の話だが、映画『腹腹時計』ではその失敗に終わった天皇暗殺テロを「狼」に変わって実行しようとする男が主人公の架空の社会派ドラマをでっち上げようとする。ちなみに「腹腹時計」とは実在した過激派セクトである「狼」が爆弾逃走の方法論や意義、それを実行するゲリラの地下生活の手段について説いたマニュアル本で、実際に自費出版・作者未詳で一部に出回ったものである。(詳細は書評で)。


で、この映画『腹腹時計』。まず自主映画である。ということは16ミリ作品であり、大学生の映研の作品がちょろっと昇格したレベルである。映像のクオリティーは度外視しても、音声が非常に聞き取りにくい。はっきり言ってセリフの聞き取り不可能である。代わりに字幕が流れるのだが、これが英語。海外公開用のプリントのため、と説明されてるが非常に疑わしい。キャストは全て素人。美術全般は非常に貧しい。したがってロケが多いが、無断撮影のオンパレード。アクションシーンが多いが、ちゃちの一言に尽きる。


それでもドラマの設定はそれなりに捻りもありそうなことが、根性で見続けているとそれなりに分ってくる。戦前の朝鮮植民地化の問題に踏み込んでテロルのドラマを膨らませようとしているのは分かる。アナーキーでシリアスな反体制的社会派シネマを標榜していることは伝わってくる。実際、某「作る会」の会長の血圧を上昇させるくらいの過激な非国民的描写が連発する。なにせ腐っても「天皇暗殺」映画であるのだから。


監督の渡辺文樹は80年代から一貫して地方在住でアマチュア畑で自主映画を製作し、通常の配給システムから除外されたところで全国に及ぶ自主上映会を敢行し、そのドキュメンタリー的手法によるセンセーショナルな表現から一定の評価を勝ち得てきた。私ドキュメンタリー的な初期の作品群をのぞけば、ほとんどが原発問題や日本人の封建的体質を告発した反体制的内容が多い。しかもゲリラ的な撮影でノンアポで被写体に迫ったり、実際の殺人事件に触れて「真犯人」をでっち上げて(と言っても作り手は確信しているのだが)名指ししたり、挙句の果てはアクション場面用の爆弾作り(通常の映画撮影用のウソ爆弾ではなくモノホンの)をしたり墓の盗掘までやってのける。表現者としてのスタンスが常に露骨に攻撃的で対象を挑発する。


自主上映会の敢行も特殊である。ポスター張り以外の宣伝活動を一切やらない。いつのまにか上映会場のある町の各所に張り巡られたポスターには必要な情報のクレジットが極端にカットされ、おどろおどろしい絵に「ゲロ袋持参して」「途中退場を覚悟で来て下さい」とグロテスクな何かであることのみを強く誇張する。だから映画の上映会ではなく芝居の上演と誤解して来場する人もいる。監督自らチケットを裁き、上映前に壇上であいさつ(アジ?)をぶつ。そして音声聞き取り不能のストーリーよくわからん作品上映、と到る。内容が刑法に抵触しかねないから上映を拒否されたり、裁判にかけられて永久に上映できなくなた作品もある。とかく裁判ネタには尽きることはない。そして数億円の借金を抱えながらなおショボショボ映画制作を製作し続けようとする。


アクション映画を作るために一昔前のアフガニスタンに渡り、ゲリラ兵士の訓練も受けたという渡辺文樹。知識人という言葉が死語になり、アーティストという人々が押しなべてワイドショーのコメンテーター並の愚弄と化し、保守的傾向を強める世論が再び一億総八紘一宇へリベンジかという昨今、どんなにショボくてクオリティー・ナッシングで自己破滅的に借財を背負いながらも、もはや誰もやらない「反体制」なんてことを日本共産党を数億倍出し抜く過激さでやってくれる化石的なこの人に向かって、わたしは毎夜足を向けては寝られない。


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