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『ようこそ地球さん』 / 星新一


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ようこそ地球さん
星新一
新潮社 1972-06






わたしはこの人の小説を始めて読んだのは中学の教科書だったと思う。ショートショートという形式の易しさからずいぶんたくさんの文庫を読んだ。とても教科書に扱いかねない内容の作品をたくさん読んだ。大人になってから再読したりもしたが、やはりとっても危険な文明批評がこの作家の本領のように思われる。


星新一はまるでエイリアンのように人類の知性の足掻きを眺めてあっけない運命の底に突き落とす。世俗的なアイテムを拝し、無機質な筆致で淡々とそれを描くものだからエイリアンのような高みに思えるのだ。独創的で自主独立的だった父親の反映か、それとも若い頃に債権問題で法廷闘争に明け暮れたことの所以か。彼の文明批評は主体性を全く欠いて辛辣だ。


しかし本書に所収されている「処刑」「殉教」の2編に代表されるような作品は極めてシリアスな作者の危機感をほんの少し漂わせたような趣を持っている。「殉教」において死者と交信する機械を発明した人類は死に対する恐怖感を克服した後、流行病のように次々と自殺していく。死後の世界への不安を死者からの言葉によって信用した人々は、生きている世界を軽々と放棄してカルト宗教の集団自殺のように死んでいく。そして、死者の言葉や交信機そのもの、また信じるという能力になお疑念を持つ人間たちだけが生き残り新しい世界を作ろうとしていく。


この作品自体の文明批評が危機的な主題を担っていることはもちろんだが、ここで作者が提示してみせた「殉教者」と「生き残り」という二つのベクトルの、どちらをも救いを見出せない部分に星新一のスタンスがある。ここで作者は知性レベルでの「出口なし」の悲惨な運命をどこからも干渉することなく、あらすじの上からの視線でしか見届けない。ゆえに信じうる対象のパースペクティヴを読者は全く持ち得ない。あらすじの上からの視線 ― これこそが星新一のシリアスなまなざしなのだろう。


彼の文体にも構成にも、どこにも彼らしさがなく、視点が全く俯瞰的である。ゆえにもはや文明批評を通過して文明を俯瞰する透徹したまなざしのみがあるだけである。しかし実はこういうスタンスこそが、知性レベルの形而上的内容を扱う姿勢としては一番クールで忍従を強いられる形なのではないかと思う。星新一の一連の創作は作者として一番厳しい立場から描き出された逆説的なポスト・ヒューマニズムな作品群ではないかとわたしは考える。





ようこそ地球さん (新潮文庫)ようこそ地球さん (新潮文庫)
(1972/06)
星 新一



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