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『天皇ごっこ』 / 見沢知廉


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天皇ごっこ
見沢知廉
第三書館 1995-12





見沢知廉といえば、一昔前はよくTVに出て、思想の左右を問わず、文壇の本流やサヴカルチャーの領域を問わず、一時期「寵児」として受け入れられていた感がある。

この「天皇ごっこ」が彼のデビュー作であるが、やはりタイトルからすでにこの人の基軸の激しさをはっきり打ち出している。この人でなければ書けなかった作品である。

著者は新右翼民族派の一水会に属し、スパイ粛清事件などにより12年の懲役刑に服した人。本書の大部分は獄中で看守の目を盗んで書かれたものである。
ちなみに著者は右翼になる前は新左翼に属していたこともある。

天皇という究極のタームに関して、右翼の目から書かれた前代未聞の小説。監獄、精神病院、右翼左翼、北朝鮮など、あらゆる角度から天皇制というものの意味性が暴かれていく。反天皇というよりも天皇制の根源的な部分を焙り出しシニカルに描いた観がある。

本書の中で「ロシアではあまりに皇帝制が長く続いたためにツァーリの亡霊がレーニンやスターリンに乗り移った」というような記述があるが、日本人と天皇制の関係をよく映し出しているような言葉である気がする。戦前の共産党が反天皇制を綱領に掲げながら逮捕されてことごとく転向した理由の一つに、天皇制を打倒することの恐怖を乗り越えられなかったことが挙げられる。

天皇制はこの国土そのものの権化であり、わたしたちの集合的無意識なのだ。

「天皇ごっこ」はそういった天皇たる存在と日本人たる存在を拡大延長した反映として北朝鮮を映し出したりしている。

我々日本人が皇室に対して、もしくはデモクラシーに対するその違和感に対して、はっきりと言辞を、タブーを、突破したときにのみ、我々日本人はお隣の「将軍様」に対して論破しうるのである。

かつて天皇の赤子であった「大本営放送」の記憶は、目くそ鼻くその友人である「平壌放送」とは臭い仲である。

またネオコン風土となりつつある最近の日本やアメリカにおける「不安と監視」を抑圧へ迎合させることをベースとした社会について、本書がすでに90年代半ばにおいて言及している節があるのも興味深い。

「天皇」は上からの統制のシンボルではない。むしろ、「赤子」たる側が「天皇」が「語りうる対象」であるかどうかにこそ、わたしたちの社会のリベラルが見え隠れし、暴力が照らし出されるのである。


その意味で本書は暴力的イデオロギー装置のからくりの根源的な要素をあくまでシニカルに解剖した作品ということができる。



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天皇ごっこ天皇ごっこ
(1995/12)
見沢 知廉



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