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フィッシュマンズ / 空中キャンプ


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Fishmans /   ”Kuchu Camp” / 1996






フィッシュマンズのメジャー移籍第一弾にして提出された記念碑的名作。
いまでもこのアルバムをしてフィッシュマンズのベストに挙げる人も多いと思う。

当時の音楽シーンがどんな状況だったか分からないが、個人的にはいわゆる「渋谷系」ブランド、それに似た類の音がどこからも四方を塞いでいたような頃だった気がする。
そんなときにFM802で奇跡的な偶然のように出会ったこのアルバムのシングル「Baby Blue」がやたら気だるくて一際へヴィーなマイナスベクトルを放射して、ラジオから浮遊するように聞こえてきた。
「渋谷系」と機軸を共にするようなどこか懐古趣味的な音のイメージがしたけれど、モノホンの「渋谷系」が明るい60年代なら、こちらは薄暗い70年代という感じで。

「なんだか死にたくなるような曲だな」と思ったことはよく覚えている。
僕と同じように『空中キャンプ』から死の匂い、というか、死にまつわる倦怠を感じた人は他にもたくさんいたんじゃないかな。

1999年にボーカルの佐藤伸治が急逝した直後、僕はまったく関係ないことだが極度のうつ状態になって精神科に入院した。
入院するほんの数日前、CDショップで「MAGIC LOVE」のPVをボンヤリ眺めていたこともよく覚えている。

僕にとってはフィッシュマンズはいつも気だるいマイナスのベクトルに向かって聞こえてきた音楽だった。
でもそれがまた随分と心地のいい倦怠感だったわけだ。

最近になってからフィッシュマンズのポリドール移籍前の作品を掘り起こして聞いてみたけれど、『空中キャンプ』とはまるで断絶したかのような作風であったことには驚かされた。

彼らはレゲエやダブを日本の都市の日常に置き換えたロックステディを忠実に追い求めていたバンドとして、デビュー以来長く続けてきた。

それはあくまで日本のルードボーイの姿を描こうとしていたような、ロックステディの国産品を作ろうとするような、ある種の気概、もしくは気負いが反映されていた音楽であったように思う。

そういう今までの気概がこの『空中キャンプ』ではまったく突如に四散して、レゲエだとかダブといった音楽的背景が後退して見えなくなった。ロックステディのようなテーマ性も必要としなくなって、もっと切実で重いなにかしらの詩的描写を潜ませた世界観に変わった。

瑞々しい水彩画が、キャンバスに重くのしかかる油絵に変わった、というような喩えがいいだろうか。

『空中キャンプ』で、フィッシュマンズは青春期のルードボーイを描写するような躍動的なバンドから、もっと普遍的で何処にも誰にも起こり得る表象をなぞるような表現世界を確立させたのではないかと思う。


どこかのフィッシュマンズのファンサイトで書かれていたことだが、「Baby Blue」に出てくる「きみ」というのは、本当は現実にいる誰かの「きみ」ではなく、自分の内側にしかいない「きみ」のことなんじゃないか、というようなことが書かれていて深く共感したことがあった。

このアルバムで描かれているものは本来レゲエとかロックステディの中で描かれるような直接的な現実の記載ではない。
それよりももっと深く、沈降した、虚実の分からない、行方不明のいつかの未明のクルージングというような感じだという気がする。

自分たちが出発した音楽的背景を抜け出して、とてつもなくカテゴライズを拒んだ表現世界を持ち得たとき、甘美で、倦怠で、ほのかに死を誘引させるようなところで彼らの音楽は漂流していた。


佐藤伸治の急逝はまるで作り事のように彼らの音楽の終わり方にふさわしすぎた。


フィッシュマンズが続いていれば、どんな感じの音楽だったのだろうといつも思う。




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空中キャンプ空中キャンプ
(1996/02/01)
フィッシュマンズ

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