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読書と音楽と映画の寸評

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小島麻由美 / My Name is Blue


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Mayumi Kojima /   ”My Name is Blue” / 2001






このアルバムで初めて小島麻由美を聴いたとき、1曲目の「甘い恋」をPVで見ながらHMVで視聴したのだが、少々ありがちな型にはまったレトロ趣味志向だなあと思った。
だが、しばらくしてから彼女の1st『セシルのブルース』を聴いたとき、なんか好きなようにやってるなあという感じで好感を持った。『My name is blue』を聴いたときのような、型にはまりすぎな方向じゃなくて、少ない音数で気軽にやりたいことをやってる雰囲気が、気取りがなくて好きだった。
最初に僕にHMVで『My name is blue』の視聴に誘った年下の女の子が「彼女は音楽を表現してるんじゃなくて、ただ好きなだけで音楽やってる人なんですよ」と形容した意味がよく分かった。
その翌年だったか、シングルの『恋はサイケデリック』をリアルタイムでFMで聴いたとき、「なんかこれはすごく売れるんじゃないか」と意外な器用さを感じて驚いた。

その後しばらく小島麻由美を聞くことはなかったんだけど、その間に椎名林檎が東京事変とかをやってるのを見て「そう言えば、小島麻由美は椎名林檎のパクリだったのかもな」なんてことを思いながら過ごしていたわけだが、ある偶然のきっかけで小島の『二十歳の恋』と『さようなら、セシル』をいっぺんに聴く機会があって、これがかなり自分的に衝撃が沸騰して「マイ・小島麻由美再考ブーム」がやってきた。

1st『セシルのブルース』と4作目『My name is blue』との間にこんなにも音楽的冒険を渡り歩いていたことが、「ただ好きなだけで音楽やってる人」にしては随分と面白いことを実験してきたんだなと、なんとなくものすごく小島さんに申し訳ないような気持ちになった。
それともう一つびっくりしたのが、先に挙げた音楽のレトロ趣味志向、たとえば「大正ロマン」だとか「昭和歌謡」というかそういう類の音楽性を、実は小島麻由美は椎名林檎たちとかよりももっと早い時期から先駆的にやっていて、ある意味パイオニア的存在だということを知って、またまた小島さんに激しく申し訳ないような気持ちになった。つまり、小島麻由美が椎名林檎をパクる、ということは常識的にありえないことな訳だ。

だが、僕が小島さんに対して最も申し訳なかったことは、実を言うと、HMVで「甘い恋」を視聴して『My name is blue』を買ってはみたものの、それ以後約5年間に渡って、僕は『My name is blue』を、最後の曲まで一度も聴いたことがなかったということだった。

僕は5年を経て初めて『My name is blue』を最後の「わいわいわい」まで聴いた。
「ひまわり」と「あの娘はあぶないよ」のところで、不覚にも、泣いた。


小島麻由美の音楽性のエッセンスは先述したとおり、いわゆるレトロ趣味志向に彩られている部分が多々ある。
だが彼女の公式サイトで、「高校時代、ふと耳にしたローズマリー・クルーニーの音楽で突然アメリカン50'sの虜に」なったと述べてあるとおり、レトロ志向といっても、それこそ「ありがちな」大正ロマン云々みたいな「レトロの主流」みたいなところからは距離を慎重に置いているスタンスを感じる。
レトロ志向のミュージシャンの人たちは、言ってみれば80年代初頭に戸川純だとか上野耕路の二番煎じにみたいなもんだとまとめちゃうのは暴論だが、そういう先達との差別化に腐心する亜流の定めと格闘してるような感じが個人的にはある。

そういう亜流の腐心と比べてみれば、小島麻由美は非常に肩の力を抜いて天然にやってるように見えるんだが、たぶん彼女の場合、音楽的感性のネタ創出の次元が、一般的にJ-POPやってますという人たちのそれと比べてある意味広い、とも言える。ローズマリー・クルーニーが好きという邦楽アーティストはメジャーで聞いたこともないが、50'sオールディーズと言ってもなんかイタリア寄りで主流じゃないし、そもそも愛読書が村上春樹で、好きな映画はゴダールというのは有り得ても、そういう彼女のデビューシングルがビバップというのが一筋縄ではいかないところ。マリア・カラスやエラ・フィッツジェラルド、サティが好きで、だけどドアーズ、キンクス、ベルベットも聴きますみたいなところは、守備範囲が広いと言えば広いが、エキセントリックな女の子というカテゴライズからすれば単にベタ。

そういう引き出しの多さ、守備範囲の広さが、強みでもあり節操のなさでもあり、だがそれゆえに彼女がインディペンデンスな歌姫たらしめているという理屈も通じる。
だけどメジャーシーンで成功した椎名林檎ですらある意味キワモノ的に見られているとしても、彼女も含めてメガヒットする人たちやプロデューサーたちが正攻法的に音楽を聴いて真面目にJ-POPの系統みたいなのを踏んでるのは、ベタで節操のない小島麻由美より正統ではあるが、その正統というのは結構いろいろパターンあるようで実は枝葉の少ない世界だったりするかもと思ったりする。

逆の意味で椎名林檎やEGO-WRAPPIN'、ジムノペディが小島麻由美と比べれば随分まともでウケやすいレトロ趣味志向の人たちだとすれば、倉橋ヨエコだとか黒色すみれ、ちょっと毛色が違うが犬神サーカス団なんかはレトロ志向の前衛というか極北みたいなところでカルト的にやっている人たちもいる(といっても、やっぱり80年代のゲルニカの焼き直しに感じるんだが・・・)。
こういうのを聴いていても、小島麻由美はニュートラルな意味で自由で好きなようにやってるんだなって思うわけだ(良いか悪いかとかじゃなくて好き嫌いの判断で)。
そういうカルトな人たちもたぶん自分が好きなことを好きなようにやってるんだろうけど、そういう志向の先っちょを徹底してやり続けていると、本来自分が好きなことを「好きなんだ」ってことが自分にとって強迫的に(ファンからは望まれるままに)やってるヤナ感じに変わって行っちゃって、それが緊縛プレイになっちゃってしまう、なんてこともある。


小島麻由美が程よくインディーでありながら節操なくニュートラルというのは、彼女の趣味がオペラやブルースやオールディーズやいろいろなところを引き出しにしてるってことと同時に、そういうセンスの中の美味しい部分、気持ちいいと感じる部分をとても正直でベタに取り出してくるってことで、彼女が感じるそういう気持ちよさってのは意外とオーソドックスでPOPである訳だ。彼女はエキセントリックでありながらミーハーでもあるわけで、いろいろ好きなものを雑多にいっぱい持ってる人って、当たり前のことだけど、それぞれの美味しいところを知っているからこそトータルに見ればウケる物の目利きもいいってことだ。

小島麻由美の目利きの良さってのは、彼女の楽曲の骨組みそのものが聴き心地のいい鼻歌みたいにキャッチーであるところに表れている。処女作とされてる『真夏の海』なんかそのいい例で、確かにレトロな感じなんだけど、メロディライン自体が単純に聴きやすい。

そして彼女のバック演奏を支える塚本功、清水一登、ASA-CHANGといった人たちがまたジャンルが多彩で達者な人たちなものだから、それが小島麻由美の楽曲のシンプルな良さに加えて玄人的に唸らされるようにディープな渋みを与える。ニコニコ動画でFM802で過去に放送されたスタジオセッションを聞いたけれど、『恋はサイケデリック』が小野リサみたいなボサ風味になったり、「わいわいわい」がむちゃむちゃ分かりやすいカントリータッチになったりしてて、改めて意外な器用さに驚かされた。


小島麻由美の現在のところのベストアルバムを客観的に選ぶのはすごく難しい。彼女のスタンダードナンバーを3つ挙げろと言われたらそれはもっとすごく難しい。曲の次元で言うならば彼女の名曲は『My name is blue』以降の「セシル」時代から大きく飛躍して洗練されたアルバムから選ぶのが普通かもしれないけど、「真夏の海」や「恋の極楽特急」のただただお気軽に愉快だったり切なかったりしてた「セシル」の曲たちも捨てがたい。アルバムの次元でベストを選ぶなら最も完成度が高いのはいろんな人が言うように『愛のポルターガイスト』だろうけどな。

でも敢えてこの項で『My name is blue』を取り上げたのは個人的な経緯もあるし、なにより前半の鬱な倦怠感の空気から、明るい陽だまりの中でゆっくり多幸感に包まれていくような、そういうアルバム全体の流れが良いと思ったからだ。

特に「黒猫」のあたりでブルーに落ち込みながら、「星に願いを」のところで少し光を感じて、「ひまわり」のところで確かな温かみに代わって、「あの娘はあぶないよ」で跳躍して、「わいわいわい」での思わぬところで大団円、という流れがいい。ライヴでよく最後の方で演奏される「ひまわり」はやっぱり個人的には一番好きな曲かもしれない。


椎名林檎と小島麻由美がプライベートで仲がいい、みたいな話を聞いたことがあるが本当だろうか。そうであっても別段不思議でもなんでもないことなんだが。
椎名が映画『さくらん』で作った歌(名前は忘れた)を聴いていて、それは僕からすれば小島麻由美が十八番みたいにやってた類のことのようで、椎名林檎がなんかぎこちなげに、でも今までと違うことをバーンとやってるところを見ると、もしかしたら椎名林檎はもっと早いうちにこういうことをさっさとやってしまいたかったんじゃないかって、そういう憶測を感じたりした。

ま、憶測だけど。




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(2001/09/05)
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